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■認知症とは

 認知症とは、一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態で、それが意識障害のない時にみられます。(「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会(編):認知症疾患治療ガイドライン2010、医学書院、東京、2011)

■認知症と物忘れの違い

 認知症を発症した方の多くは記憶の障害が目立ちますが、発症していない方でも脳の機能が衰えることで物忘れは起こります。(生理的老化=健忘) この二つの違いは認知症を抱えた方の物忘れは、体験した活動全体を忘れてしまい、その後の生活に支障をきたしますが、生理的老化による物忘れは、体験した活動の一部分の物忘れなので、その時のエピソードを思い起こせば自分が物忘れしていたことを認識でき、生活に支障をきたしません。

■認知症の種類

 認知症を引き起す病気で一番多く確認されるのがアルツハイマー病で、次に多いのが血管性認知症。 レビー小体型認知症→前頭側頭型認知症(ピック病)と続き、これらで「4大認知症」と言われています。 血管性認知症は脳の血管が破裂したり詰まったりすることで脳の組織に異常をきたします。その他の3疾患では脳にある神経細胞が自ら壊れていくことによっておこり、「変性疾患」と呼ばれています。 また、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症など外科的手術で脳が正常な状態に戻る「治る認知症」もあります。

アルツハイマー型認知症.png

アルツハイマー型認知症

血管性認知症.png

血管性認知症

■認知症の症状と経過

 変性疾患や脳血管疾患から生じる症状として、中核症状がありそれによって知的機能、記憶力、見当識が低下し、それに個人特性が加わって起こる「行動・心理症状」と個人特性から環境要因と心理的負担から起こる二次的要因としての「行動・心理症状」があります。 行動・心理症状は、被害的妄想や介護拒否、暴力行為や徘徊、抑うつ状態など様々な症状がありますが、個人特性などの要素から生ずる行動・心理症状はさまざまです。 また、中核症状は脳の神経細胞が機能しないことで起こる症状のために改善は難しいですが、行動・心理症状は二次的要因のために、対応次第では改善や緩和が可能です。(図1)

 経過としては、血管性認知症では新たに血管障害がおこらなければ特に大きな変化はみられませんが、変性疾患ではゆっくりと症状が進行します。 その速さは個人差があり、かつ対応次第でも状態は変わります。(図2)

行動心理症状 図解.png

【図1】

認知症の進行と経過.png

【図2】

■認知症を抱えた方の心理

 図1にもありましたように、分からない・できないことが増えると気持ち的な変化が生じます。

また、認知症を抱えた方の周囲の対応や反応に影響して心理状態が変わり、行動・心理症状に影響を及ぼします。

 

不満=思った評価が得られないことや思いどおりにいかないことで生じます。病気の影響で要求を伝えられない。物忘れを理解できない(病識がない)という中核症状の影響もあります。

 

不安=認知症を抱えた方は記憶が辿れないことで、漠然とした不安を抱えているといわれています。また、認知症を抱えた初期の段階から分からないことが分かり行動することで失敗することを恐れてひきこもるような言動もあります。

 

怒り=身に覚えのない指摘をうけることや物事が上手く運ばないことで怒りの感情が生まれます。物忘れを指摘されたり、病気を抱えてから上手くできないことなど他者から軽視されることで自尊心が傷ついて攻撃的な言動に繋がります。

■認知症の方への対応

 認知機能障害で、いままで分かっていたことがわからなくなり、できていたことができなくなったりします。 対応で注意したい点は分かっていることやできることを支え、いままでどおりの暮らしを支えることが自立支援にもつながります。図2にあるように残存機能に働きかけることが行動心理症状への対応にもなります。 図1の加藤モデル(認知症介護研究研修仙台センター センター長)では、認知機能障害から生じる中核症状に「不安感」や「不快感」など心理的な因子がBPSD(行動心理症状)が生じる流れを説明しています。 図2は発生した行動心理症状に「物忘れを責めない対応」や「受容的な対応」をするなど適切なかかわりを実践することで、行動心理症状が緩和することを図解にしています。

<対応の基本>

記憶障害…物忘れを責めず、根気よく対応する。

見当識障害…生活リズムや生活環境を整える

思考力や判断力の障害…情報を簡素化し、判断の材料を増やさない

実行機能障害…ひとつひとつの言葉かけで案内する

BPSD加藤モデル.png

認知症のPBSD 加藤モデル

BPSD加藤モデル 対応.png

認知症のPBSD 加藤モデル

■対応する際のポイント

 認知症を抱えた方が行動心理症状をきたすのは何も分からないからではなく、分かることと分からないことで生じる摩擦から環境や個人因子などの影響があり二次的要因として出現しています。 そのためケアする側は分かることやできることを理解していないとケア者の都合で説得するような場当たり的な対応となり、関係性が悪化します。 また、認知症の原因となる疾患によって対応も変わりますので、専門医の受診をお勧めします。 さらに、ケア者の知識や技術などが発揮できるよう対応には余裕やゆとりを持って対応することが大切です。 一人で抱え込まず、まずは相談してください。

認知症介護のなんでも相談室.png
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